夏の終わりに

僕は昨日夏の終わりのお知らせを受けました。

夕方自宅へ帰ると我が家へ上り切る手前の階段に

一匹の玉虫。

何年ぶりだろう、もうこの辺りにはいないと思っていた。

虹色に輝く美しい昆虫は足が一本途中から欠けていた。

とっさにこれは夏の終わりのお知らせだと思った。

大学3年の夏休み、高知で

僕は養護施設で住み込みの臨時教員のアルバイトをやっていた。

事情があって親と一緒に住めない子供たちと一夏を過ごした。

そのバイトが終わる時

施設の子供たちがお別れぎりぎりまで森に入って

探してきてくれた玉虫3匹。

「先生、玉虫が好きながやったねえ。」

やはり虹色に輝く昆虫は夕焼けの施設の広場で

一際美しく輝いていた。夏の終わり。

だから、昨日の玉虫は夏の終わりのお知らせに違いないと思う。

僕は玉虫を拾い上げて網戸の内側にとまらせ

ひとしきり眺めた後

来年も知らせに来てねと今度は網戸の外側にとまらせて

冷蔵庫にビールを取りに行ったのでした。

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